病院・診療所(お医者さん)における広告規制 / 柔道整復師、マッサージ師における広告規制
病院・診療所(お医者さん)における広告規制 / 柔道整復師、マッサージ師における広告規制
1.医療行為、医療類似行為、その他の行為
医業・歯科医業・病院・診療所・助産所等よる医療行為については、「医療法」に基づく広告規制があります。
また、医師以外の者が行う医業又は類似する診療・治療行為のことを医業類似行為といい、原則違法とされています。しかしながら、あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう、柔道整復等の施術は、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」や「柔道整復師法」により資格取得を条件に合法とされています。そして、これらの法律に基づく広告規制が存在します。
この様に、医療行為や医業類似行為に該当する場合には、各法律による広告規制がありますが、該当しない場合にはこれらの規制が及ばないことになります(もちろん、各資格による業法規制が及ばないだけであり、景品表示法・薬事法等の資格に関係のない広告規制は及びます)。
そうすると、巷にあるカイロプラクティックやクイックマッサージ、足つぼマッサージ等は、医業類似行為に該当し違法なのではないかという疑問点が生じるはずですが、現行法上の解釈としては、医業類似行為に該当しないとされています。これは、最高裁判所の解釈により、医業類似行為とは「人の健康に害を及ぼす業務行為」と限定されているからです(最高裁昭和37年1月27日大法廷判決)。
以上をまとめると、広告規制の考え方としては、次のような区分となります。
医療行為 |
医療法に基づく規制 |
あはき法等による医業類似行為 |
あはき法、柔道整復師法に基づく規制 |
健康に害を及ぼすおそれのある医業類似行為 |
無資格営業として禁止 (広告規制以前の問題) |
健康に害を及ぼすおそれのない医業類似行為 (=最高裁判決により規制対象とされない以上、医業類似行為に該当しないとも言える) |
資格・業法に基づく広告規制無し (景品表示法・薬事法等の検討は別に必要) |
2.医療行為と医療法の広告規制
(1)従って、色々な考え方があるのですが、一般的には、「専門家としての教育及び訓練を受けた医師の医学的知識と技術を用いて行うのでなければ人体に危害を及ぼすおそれがあり、それ故に医師によって行われることが社会的に要請されるもの」と定義されているようです。
要は、人体=生命・身体に危険が生ずる行為と考えておけば間違いないかと思います。
(2)では、医療行為に関する広告を行う場合、どの様な広告規制があるのでしょうか。
まず、そもそも何が「広告」(医療法6条の5)に該当するのかについては、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告しうる事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針」を検討するのが一番かと思います。
なお、この中で医療に関する広告とみなされないものの具体例として、
が記載されていますが、それぞれ一定の留保がついています。従って、例えばホームページだから医療法による広告規制が当てはまらないと判断するのは早計ですので注意が必要です(バナー広告やPPC広告は該当性が高いとされています)。
次に、広告に該当するとして、広告可能な事項は、次の通り、医療法6条の5第1項に規定される事項に限定されています。
3.医療類似行為と「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」「柔道整復師法」による広告規制
(1)特別に免許付与されたあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師とはいえ、人の健康に害を及ぼすおそれのある医業類似行為を行う以上、あはき7条1項に規定する事項のみ広告を行うことができるとされています。
具体的には次の通りです。
(※①もみりようじ、②やいと、えつ、③小児鍼(はり)、④医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る)、⑤予約に基づく施術の実施、⑥休日又は夜間における施術の実施、⑦出張による施術の実施、⑧駐車設備に関する事項)
(2)同様に柔道整復師についても、柔道整復師法24条に規定する事項のみ広告を行うことができるとされています。
(※①ほねつぎ(又は接骨)、②医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼きゆう又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る)、③予約に基づく施術の実施、④休日又は夜間における施術の実施、⑤出張による施術の実施、⑥駐車設備に関する事項)
4.カイロプラクティックやクイックマッサージ、足つぼマッサージについて
上記までの通り、人の健康に害するおそれがない施術であれば、医業類似行為として規制対象が及ばないこととなり、各資格による業法に基づく広告規制が行われないことになります。
しかしながら、例えば、カイロプラクティック療法によるガンの治癒等医学的有効性をうたった誇大広告については、治療目的=医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあるので、医業または医業類似行為に該当する、すなわち、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律12条の2第2項において準用する7条1項又は医療法第69条1項に基づく規制の対象となると厚生労働省は解釈しています(医業類似行為に対する取扱いについて、平成3年6月28日付厚生省健康政策局医事課長通知)。
従って、どんな広告表現・表示でも良いというわけではなく、とりわけ本来医学的な判断が伴う治療、治癒・健康回復などを広告・表示することは、「人の健康に害を及ぼすおそれある」医業類似行為として規制対象になりうるので、注意が必要です。
※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。