景表法における課徴金制度とは?予防策から対処法までそのポイントを解説
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【ご相談内容】
当社はメーカーより商品を仕入れ、消費者に販売する小売業です。
これまではメーカーより提供されるパンフレット等を参考に宣伝広告を行ってきたのですが、今般メーカーより、パンフレット記載内容に誤りがあったので至急修正するよう通知がありました。
商品の品質の根幹を揺るがしかねない修正内容であり、優良誤認表示と判断されるおそれもあることから、早急に対策を講じたいと考えています。課徴金納付命令は何としてでも避けたいのですが、何か対策はあるでしょうか。
【回答】
あまり頻繁に報道されることは無いのですが、消費者庁のWEBを確認すると、景品表示法に基づく課徴金納付命令は毎月1件以上出されている状況です。そして、有名・無名企業を問わず課徴金納付命令が出されている状況を踏まえると、中小企業だから安心と考えることは禁物です。
さて、景品表示法に定める不当表示に対する課徴金制度の概要は次の通りです。
<対象行為>優良誤認表示及び有利誤認表示
<課徴金額>課徴金対象期間における課徴金対象行為に係る商品・役務の売上額の3%
<減額事由>①事業者が消費者庁に自主申告した場合は50%減額、②事業者が一般消費者に対し自主返金を行った場合は減額
<免除事由>①不当表示であることを知らず、かつ知らないことにつき相当の注意を払っていた場合は課徴金を課さない、②課徴金額が150万円未満(=売上額5000万円未満)の場合は課徴金を課さない
以下の【解説】では、課徴金納付命令の対象となる行為、課徴金額の計算方法などを確認した上で、平時(事業者が不当表示と認識していない段階)と有事(事業者が不当表示の可能性を認識した段階)に分けて、どのような対策を講じることができるのか説明します。
【解説】
1.課徴金納付命令の対象行為とは
課徴金納付命令の対象行為は、景品表示法第5条第1号に定める優良誤認表示と、同条第2号に定める有利誤認表示となります(景品表示法第8条)。
なお、景品表示法第5条第3号では、いわゆる指定告示に係る表示について定めていますが、この指定告示に係る表示違反は課徴金対象行為ではありません。
■優良誤認表示とは
景品表示法第5条第1号
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの |
例えば、ダイエット食品(健康食品)を販売している事業者が、「レースクイーンが15キログラムもDOWN!?専門家配合サプリ」等と広告表示したことに関し、優良誤認として処断された事例があります。
この事例は、健康食品でありがちな著しく強調された効能効果を用いた表現といえます。身体に作用するものである以上、各個人によって効果に差異が生じることから100%の効能効果を記載することはできません。
■有利誤認表示とは
景品表示法第5条第2号
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの |
有利誤認表示ですが、例えば、某日の新聞折込みチラシに、化粧水(本体)については「当店通常価格2,380円(税込)の品 税込1,980円」と表示し広告したところ、実際には化粧水(本体)については、最近時の販売価格(8週間)のうち、短期間(22日間)において販売されていた価格2,380円を「当店通常価格」と表示していたという事例につき、有利誤認であるとして処断された事例があります。
この事例は、過去に販売していた価格を恣意的に取り上げ、当該価格を比較対象とした点で有利誤認であるとされている点がポイントとなります。
なお、優良誤認表示及び有利誤認表の考え方については、次の記事をご参照ください。
マーケティング活動を行う企業が知っておくべき景品表示法について、弁護士が徹底解説!
2.課徴金納付命令の金額算定方法
課徴金額は、
①課徴金対象期間に取引をした
②課徴金対象行為に係る商品又は役務の
③政令で定める方法により算定した売上額に3%を乗じて得た額
で算出されます(景品表示法第8条第1項本文)。
事業者が、第5条の規定に違反する行為(同条第3号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に100分の3を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。 |
(1)課徴金対象期間とは
課徴金対象期間については、景品表示法第8条第2項に定められています。
前項に規定する「課徴金対象期間」とは、課徴金対象行為をした期間(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から6月を経過する日(同日前に、当該事業者が当該課徴金対象行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置をとつたときは、その日)までの間に当該事業者が当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が3年を超えるときは、当該期間の末日から遡って3年間とする。)をいう。 |
やや条文が読みづらいのですが、次の(a)と(b)を合算した期間が原則的な「課徴金対象期間」となります。なお、合算した期間が3年を超える場合、課徴金対象期間は3年として取り扱われます。
(a)不当表示を開始した日から、不当表示を終了した日まで
(b)不当表示を終了した日から6ヶ月経過日
さて、上記のポイントは、不当表示を実際に行っていた期間だけではなく、不当表示を終了しても6ヶ月間が加算されるという点です。
ただし、この6ヶ月については、その経過前に「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置をとったとき」は、当該措置を取ったときまでに短縮されます。
では、この当該措置とは具体的に何をすればよいのでしょうか。
この点、消費者庁が公開している「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」によれば、一例として、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法が記載されています(なお、日刊新聞紙2紙以上が望ましいと考えられているようです)。具体的な想定例などは、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」第4-1-(5)をご参照ください。
(参考)
不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方(消費者庁)
(2) 課徴金対象行為に係る商品又は役務
この要件は読んで字の如くであるため、あまり大きな問題とはならないのですが、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」の第4-2を踏まえると、次のような点に注意が必要となります。
・不当表示を行った地域が限定される場合であれば、当該地域内で販売された商品・役務の売上額のみを計上すること
・不当表示に係る商品・役務が、顧客への提供品の一部を構成するにすぎない場合であっても、当該提供品の購入のきっかけとなる場合は、その提供品自体の価格(総額)を計上とすること
・商品・役務に関する表示があった期間の内、一部期間は問題なし、残りは不当表示とされる場合、不当表示を行っていた期間中に係る売上額を計上すること
ところで、1つ目の地域限定と似て非なる問題として、課徴金納付命令の対象となる「売上」について、不当表示に係る商品または役務であって、顧客が購入することとなった流入媒体による区分を認めていない点に注意が必要です。
どういうことかというと、例えば、事業者が某商品について、全国紙の折込み広告(紙媒体)とWEB(ネット媒体)の双方で販売を行っていたところ、折込み広告(紙媒体)のみ不当表示が認められたとします。この場合、折込み広告(紙媒体)を通じて顧客が購入した商品売上額のみが課徴金納付命令の対象となる「売上」となるわけではありません。不当表示ではないWEB(ネット媒体)による商品売上額も「売上」対象となります。
つまり、某商品の購入ルート(媒体)全てに対する売上額が、課徴金納付命令の対象となる「売上」とされてしまいます。
「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」に例示されている、広告媒体が1つのみであり、その広告の及ぼす影響範囲は限定されているという事例は、おそらく現場実務では相当限定される事例ではないかと考えられます。
この点を勘違いしている事業者は多いので、注意が必要です。
(3) 政令で定める方法により算定した売上額
課徴金納付命令の金額算定の基礎となる「売上額」ですが、事業者の事業活動から生ずる収益から費用を差し引く前の数値(消費税を含む)とされています(景品表示法施行令第1条)。
いわゆる売上利益、営業利益、経常利益といった一定の経費を控除した後の金額ではないことに注意が必要です。
なお、契約不適合による値引き額(1号)、返品額(2号)、リベート額(3号)については控除可能です。
■景品表示法施行令第1条
不当景品類及び不当表示防止法(以下「法」という。)第8条第1項に規定する政令で定める売上額の算定の方法は、次条に定めるものを除き、法第8条第2項に規定する課徴金対象期間(以下単に「課徴金対象期間」という。)において引き渡した商品又は提供した役務の対価の額を合計する方法とする。この場合において、次の各号に掲げる場合に該当するときは、当該各号に定める額を控除するものとする。
①課徴金対象期間において商品の量目不足、品質不良又は破損、役務の不足又は不良その他の事由により対価の額の全部又は一部を控除した場合 …控除した額 ②課徴金対象期間において商品が返品された場合 …返品された商品の対価の額 ③商品の引渡し又は役務の提供を行う者が引渡し又は提供の実績に応じて割戻金の支払を行うべき旨が書面によって明らかな契約(一定の期間内の実績が一定の額又は数量に達しない場合に割戻しを行わない旨を定めるものを除く。)があった場合 …課徴金対象期間におけるその実績について当該契約で定めるところにより算定した割戻金の額(一定の期間内の実績に応じて異なる割合又は額によって算定すべき場合にあっては、それらのうち最も低い割合又は額により算定した額) |
(4)課徴金額が150万円未満の場合
上記(1)から(3)までを考慮し、算出された課徴金額が150万円未満、すなわち「売上」が5000万円未満である場合、課徴金納付命令は出せないことになっています(景品表示法第8条第1項但書)。
ただし、(省略)その(※課徴金)額が150万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。 |
なお、この150万円未満であるか否かの判断は、「課徴金対象期間に取引をした、課徴金対象行為に係る商品又は役務の、政令で定める方法により算定した売上額に3%を乗じて得た額」で判断されます。
すなわち、後述4.で解説する、(a)事業者が消費者庁に自主申告したことによる減額措置(リニエンシー)、(b)事業者が一般消費者に対し自主返金を行った場合は減額措置を考慮しない数字です。このため、上記(a)や(b)を考慮した結果、課徴金額が150万円未満となった場合であっても、課徴金納付命令が出されることに注意を要します。
3.課徴金納付命令を受けないための平時の対策
ここでいう「平時」とは、事業者において不当表示を行っているという認識がない場合の状況を指します。
この状況下では、景品表示法に基づく課徴金納付命令を受けないための予防策が中心となります。
(1)優良誤認、有利誤認への危機意識を高めること
最善の予防策は、優良誤認表示及び有利誤認表示を行わないことに尽きます。
ただ、上記1.で景品表示法が定める優良誤認表示及び有利誤認表示の定義を記載しましたが、かなり抽象的であり、判断基準が明確ではないと思う方も多いのではないでしょうか。
正直申し上げて、明確な判断基準はありません。このため、「優良誤認表示及び有利誤認表示に該当するかも…」という直感を事業者なりに養うほかないのですが、この直感を育成する1つの方法として、消費者庁が公表している景品表示法違反の事例を確認することを執筆者はお勧めしています。
消費者庁のWEB内にある「景品表示法関連報道発表資料」のページをみると、毎月数件の景品表示法違反の事例が掲載されています。これらの事例を読んでいくだけでも感度を高めることが可能です。なお、一定期間ごとに景品表示法違反事例をまとめた資料であれば、「その他の景品表示法関連の公表資料」のページ内にありますので、こちらを参照するのも一案です。
(参考)
※このページ内にある「景品表示法関係公表資料」より事例を閲覧することができます。
なお、上記の通り、優良誤認表示及び有利誤認表示の感度を高めることに加えて、もう1つ講じておきたい対策があります。
それは、表示内容を裏付ける合理的根拠の確保です。
優良誤認表示違反の疑義が生じた場合、消費者庁は事業者に対し、期間を定めて、表示内容の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めてくるのが通常です。この提出ができない、又は提出しても合理性を裏付けるには不十分という場合、不実証広告として景品表示法違反と認定されることになります。
消費者庁による提出要請を受けてから合理的根拠を示す資料を提出することは事実上難しいことを踏まえると、平時の段階で当該資料を確保することが重要となります。
合理的な根拠の判断基準等については、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」第7にて、「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」を用いることが明言されていますので、そちらをご参照ください。
(参考)
(2)相当の注意
仮に不当表示に該当する場合であっても、事業者が、不当表示であることを知らず、かつ知らないことにつき相当の注意を払っていた場合は、課徴金納付命令を出すことができないと定められています(景品表示法第8条第1項但書)。
ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるとき、(省略)は、その納付を命ずることができない。 |
上記制度の恩恵を受けたいのであれば、平時から「相当の注意」を払う必要があります。
では、どの程度のものが求められるのかが問題となるわけですが、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」第5-1では、次のように記述されています。
・当該事業者が課徴金対象行為に係る表示をする際に、当該表示の根拠となる情報を確認するなど、正常な商慣習に照らし必要とされる注意をしていたか否かにより、個別事案ごとに判断されること
・当該事業者の業態や規模、課徴金対象行為に係る商品又は役務の内容、課徴金対象行為に係る表示内容及び課徴金対象行為の態様等を勘案すること
ちなみに、上記1つ目にある「情報」の「確認」についてですが、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」第4-3に次のような記述があります。
・この「確認」がなされたといえるかどうかは、表示等の内容、その検証の容易性、当該事業者が払った注意の内容・方法等によって個別具体的に判断されることとなる。例えば、小売業者が商品の内容等について積極的に表示を行う場合には、直接の仕入れ先に対する確認や、商品自体の表示の確認など、事業者が当然把握し得る範囲の情報を表示内容等に応じて適切に確認することは通常求められるが、全ての場合について、商品の流通過程を遡って調査を行うことや商品の鑑定・検査等を行うことまでを求められるものではない。
・なお、事業者の業態等に応じて、例えば、小売業のように商品を提供する段階における情報の確認のみで足りる場合や、飲食業のように、提供する料理を企画する段階、その材料を調達する段階、加工(製造)する段階及び実際に提供する段階に至るまでの複数の段階における情報の確認を組み合わせて実施することが必要となる場合や、アフィリエイトプログラムを利用した広告を行うような業態では、当該広告を利用する事業者がアフィリエイター等の作成する表示等を確認することが必要となる場合があることに留意する必要がある。
なかなか一律の判断基準を設定することは難しいとはいえ、当然に流通過程全部に遡って確認することまで求められるわけではない、ただし取引先からの確認のみでは不十分な場合もあり得るというのが、一応の結論になるかと思います。
なお、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」第5-3では想定例が掲載されていますので、こちらも確認してください。
次に、この相当な注意を払うべき期間ですが、「課徴金対象行為をした期間」となります。
すなわち、商品・役務に関する表示を行い販売開始した時点だけではなく、商品・役務に関する表示が継続する期間中すべてにおいて、相当な注意を払う必要があります。
では、期間途中で、事業者が不当表示であると気が付いた場合はどのような取り扱いになるのでしょうか。
この場合、不当表示であることに気が付いた後、速やかに不当表示を中止したのであれば、当該期間中は相当な注意を払ったと考えてよいと解釈されています。
もっとも、速やかに中止しなかった場合、全期間が課徴金対象行為として認定されることになりますので注意を要します(景品表示法第8条第1項但書の適用がない以上、相当の注意を払っていたとはいえ、不当表示を行っていた事実は否定できないため)。
4.課徴金納付命令を受けないための有事の対策
ここでいう「有事」とは、事業者が不当表示である可能性を認識した状況のことを指します。
この状況下では、課徴金納付命令が避けられない事態に陥っていることから、如何にして課徴金額を減額する方策を講じるのかがポイントとなります。
(1)不当表示の取り止め
当たり前のこととなりますが、不当表示を一刻も早く取り止めることが最善策となります。これにより課徴金対象期間の短縮を図ることが可能となります。
また同時並行作業として、不当表示の開始時から取り止め時までにおいて、上記3.(2)で記載したような「相当の注意」を払っていたのか検証を行うことになります。もし「相当の注意」を払っていたというのであれば、課徴金納付命令は出ないことになりますので、極めて重要な検証となります。
(2)誤認解消措置
誤認解消措置とは、上記2.(1)で記載した「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置」のことです。
この措置を行う目的は、課徴金対象期間の短縮を図ることにあります。
すなわち、課徴金対象期間の終期は原則として不当表示を終了した日から6ヶ月経過日とされているところ、誤認解消措置を行った場合、当該措置を行った日までに短縮されることになります。
(3)リニエンシー
リニエンシーとは、例えるなら刑事手続きにおける自首のようなものです。
すなわち、制裁を一部緩和してもらうことを目的として、事業者が消費者庁長官に対し、不当表示を行っていたことを自主申告することです。
その制裁の緩和とは、具体的には課徴金額の50%減額である、この減額を狙うことがリニエンシーの目的となります(景品表示法第9条)。
前条第1項の場合において、内閣総理大臣は、当該事業者が課徴金対象行為に該当する事実を内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣に報告したときは、同項の規定により計算した課徴金の額に100分の50を乗じて得た額を当該課徴金の額から減額するものとする。ただし、その報告が、当該課徴金対象行為についての調査があつたことにより当該課徴金対象行為について課徴金納付命令があるべきことを予知してされたものであるときは、この限りでない。 |
なお、リニエンシーを行うことは、事実上不当表示であることを事業者自らが認めることを意味します。したがって、
・優良誤認表示又は有利誤認表示に本当に該当するのか争う余地がなくなるリスクがあること(合理的な根拠を有していても主張できなくなること)
・課徴金納付命令が出ないよう、上記3.(2)で記載した「相当の注意」を払っていたことを理由とする主張ができなくなるリスクがあること
・顧客への代金返還及び損害賠償対応が一気に噴出するリスクがあること
といった事項につき覚悟が必要となります。
現場実務においては、疑わしきはリニエンシーを…と安易に判断することは望ましくありません。ただ一方、リニエンシーをできる期間は限られていますので(消費者庁が不当表示の可能性を認識し、調査を開始している場合リニエンシーはほぼ不可能です)、悩んでいる暇がないのも事実です。
かなり思い切った判断が迫られることになります。
(4)自主返金
ここでいう自主返金とは、事業者が、不当表示によって被害を被った顧客に対し、法律に定める手続きに則り、購入額の3%以上の返金を行った場合、当該返金相当額を課徴金より控除するという制度です(景品表示法第10条)。
この自主返金制度を利用する目的は、課徴金額の減額を狙うことになります。
なお、返金は金銭の交付に限定されており、商品の交換、金券・割引券、ポイント、仮想通貨など現金以外のものは一切認められていないことに注意が必要です。
自主返金を実施した場合、上記(3)で記載したようなリスクが生じることも押さえておく必要があります。
5.課徴金納付命令を受けてしまった場合の対応
課徴金納付命令を受けた場合、納付命令所発行日から7カ月以内に課徴金を支払う必要があります。
一方、課徴金納付命令に納得がいかない場合、次のような手段を講じることになります。
・消費者庁長官への審査請求(行政不服審査法第4条)
・処分取消訴訟(行政事件訴訟法第3条第2項)
ちなみに、不当表示に該当した場合、上記2.(4)で記載した課徴金額が150万円未満の場合や上記3.(2)で記載した「相当な注意」を払っていた場合などを除き、消費者庁長官は必ず課徴金納付命令を出さなければならないとされています。
刑事手続きのような執行猶予(世間一般的には起訴猶予を例にした方が分かりやすいかもしれません)といった、裁量により処分を免れるということはないことに要注意です。
6.当事務所でサポートできること
当事務所は広告代理店様との取引や、自社WEBでネット通販を手掛ける事業者様との取引などがあり、景品表示法を含む広告規制に関するご相談を日常的に受けています。また、景品表示法等に基づく取締り状況などについては意識的に情報収集するようにしています。さらに、昨今は課徴金納付命令を意識したご相談も増加しており、対応を行っています。
したがって、当事務所では、業務を通じて得た知見やノウハウ等が蓄積されていると自負しており、これら知見・ノウハウ等を踏まえたご依頼者様への対応が可能となっています。
景品表示法その他広告規制に関するご相談があれば、是非当事務所をご利用ください。
<2023年4月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。
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