【民法改正】第5回 賃貸借(敷金、原状回復、修繕)

【民法改正】第5回 賃貸借(敷金、原状回復、修繕)

 

社長:前回、賃貸借について解説があったけど、よくニュースで見かける敷金に関する話は、民法改正でどのようになるの?
弁護士:よくご存知ですね。実は、現行民法には敷金について特段の定めはありません。いわゆる判例法理と呼ばれる、これまでの裁判所の判断の積み重ねで実務は運用されていました。今回の民法改正では、裁判例を明文化したものとなります。
社長:ここでも、従来からの実務運用という話が出る訳だね。
弁護士:そうです。といっても、今回の民法改正で明文化されたのは、主として次の3点に過ぎません。
 ・敷金の定義(=いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に対して交付する金銭)
 ・賃借人は、賃貸人に対して負担した債務について、敷金で充当するよう請求することはできない。
 ・逆に、賃貸人は、賃借人に対する債権について、当然に敷金で充当することができる。
社長:ニュースで大々的に言われていた割には、少し物足りないなぁ。
弁護士:どうなんですかね…。あと、ニュースで報道されていたものでいえば「原状回復」もそうですね。
社長:あ~、退去する際の修繕の話だね。
弁護士:そうです。これについても、現行民法上は具体的な定めは無く、裁判例や国土交通省の行政解釈(ガイドライン)などが実務的な運用となっていました。これらの内容を民法改正で取り入れた形になっています。
社長:またまた、従来の実務運用…ってやつだね。
弁護士:そうですね。まず、原状回復義務をどちらが負担するかについては、次のような立付けとなりました。
 ・賃借人が賃借物を受け取った後に生じた損傷については、賃借人が原状回復義務を負担する。
 ・ただし、賃借物の損傷が賃借人の帰責事由によらないものである場合は、陳謝君は原状回復義務を負わない。
 原則は賃借人が原状回復義務を負う、しかし、賃借人のせいで損傷が生じたわけではないことを賃借人自身が証明できた場合は原状回復義務を負わない、とイメージすればよいかと思います。
社長:なるほど。
弁護士:そして、賃借人が原状回復義務を負担する場合、どの範囲まで原状回復しなければならないのかという程度の問題については、おそらく耳にしたことがある、あのキーワードが出てきます。
 ・通常損耗(=賃借物の通常の使用及び収益をしたことにより生じた賃借物の損耗)については、原状回復の必要なし。
 ・経年劣化の場合も、原状回復の必要なし。
社長:「通常損耗」という言葉は、たしかに聞いたことがあるなぁ。
弁護士:ある程度は認知されている言葉なのかもしれませんね。あと、賃貸借に関する民法改正でポイントとなりそうなのは、誰が修繕義務を負うのかという規律が設けられた点になります。
社長:どういった内容なの?
弁護士:改めて見ると、当たり前のような話に思えるのですが、これまた現行民法では不十分にしか書いていないんですよね…。今回の民法改正において、修繕義務に関係する条項は次のように整理されました。

 

賃借人の修繕義務 陳謝君の賃貸人に対する修繕費用請求 滅失等による賃料減額
賃借人が有責 あり 不可 減額不可
賃借人が無責 なし 当然に減額される

 

社長:う~ん、、、たしかに常識的に考えれば、その通りだと思うし、目新しさは無いように思うなぁ。

弁護士:まぁ、よく「法律は、社会常識に合致していない!」と批判されることが多いので、今回の改正は社会常識にマッチングしたということで、よかったんじゃないでしょうか。

 

 

 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

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