下請法の効果(親事業者への義務②)
質問
「下請法」が適用された場合、どういった効果(メリット、デメリット)が生じるのでしょうか(前回の続き)。
回答
下請法は、下請事業者を保護するための法律であり、前回解説したように、①下請代金の支払期日を60日以内に行うこと、②下請事業者に対する書面交付義務が生じるといった効果が生じます。
今回は、③親事業者は一定の行為が禁止されることについて解説します。
解説
下請法が適用された場合、親事業者(委託者)が下請事業者(受託者)に対して、次のような11類型に該当する行為を行うことが禁止されています。
(1)受領拒否
下請事業者に責任が無いにもかかわらず、親事業者の都合(例:在庫がだぶついている)で受領を拒否することが禁止されます。なお、納入商品に瑕疵がある場合に受領拒否が認められることは当然ことです(下請事業者に責任があるため)。
(2)代金の支払い遅延
下請事業者に責任が無いにもかかわらず、親事業者の都合(例:決済資金が無い)で代金支払いを遅延することが禁止されます。
(3)代金減額
下請事業者に責任が無いにもかかわらず、親事業者の都合(例:販促ため市場価格を下げて販売した)で一方的に値引きすることが禁止されます。
(4)返品
下請事業者に責任が無いにもかかわらず、親事業者の都合(例:商品が売れない)で返品することが禁止されます。
(5)買いたたき
取引開始に当たり、一方的に低い下請け金額にて取引を行うよう迫る行為が禁止されます。ただ、代金減額交渉が行われるのは世の常である以上、「買いたたき」に該当するか否かは、協議の状況、通常対価との乖離状況、対価の内容、原材料の価格動向など様々な要因を検証する必要があります。
(6)購入・利用強制
特段の理由もないのに、親事業者が指定する物やサービスの購入を下請事業者に強制することが禁止されます。
(7)報復措置
下請法違反であることを公正取引委員会等へ通報したことを理由に報復措置を取ることが禁止されています。
(8)有償支給原材料等の早期決済
有償支給原材料を用いて製作する商品の決済前に、当該原材料の決裁を行うことが禁止されています。
(9)割引き困難な手形の交付
繊維業では90日、その他業種では120日を超える手形期間を定めた手形をもって支払いに充てることは禁止されています。
(10)不当な経済上の利益を提供要請
例えば、親事業者の決算対策協力金や協賛金、従業員の派遣要請など、下請事業者の責任が無いにもかかわらず、一方的に下請事業者に対して経済上の負担を要求することが禁止されています。
(11)不当な給付内容の変更・やり直し
下請事業者に責任が無いにもかかわらず、親事業者の都合(例:途中で仕様が変更になった)で返品することが禁止されます。
<現場担当者が知っておきたいポイント>
◆委託者(親事業者)側
⇒禁止される11類型を故意的に行うことはもちろん、気づかずにやっていないか取引慣行を見直しましょう。
◆受託者(下請事業者)側
⇒下請法上の禁止行為を根拠に、不当な取引条件の改善を図りましょう。
※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。