アフィリエイト広告、ドロップシッピングについてどのような法律問題に留意すべきか
アフィリエイト広告、ドロップシッピングについて留意すべき法律問題
質問
「アフィリエイト広告」に関する、法律上の問題点について教えて下さい。
また、「ドロップシッピング」との違いも教えて下さい。
回答
1.アフィリエイト広告とは
「アフィリエイト広告」について、法律上の定義はないようですが、例えば、広辞苑第6版では「個人や企業などのウエブサイトの運営者が、オンライン・ショッピング事業者などと提携して商品の広告を掲載し、広告を通じての商品販売実績に応じて報酬を得る仕組み」と定義されています(なお、広辞苑では「アフィリエート」となっています)。
大まかには次のような特徴を持ったものと言えそうです。
・広告掲載者(アフィリエイター)が運営するブログ・メールマガジン等のメディア上で、広告主の広告を掲載すること
・閲覧者が、当該広告をクリックし、クリック先のWeb上にある広告主の商品を購入した場合に、広告掲載者(アフィリエイター)に報酬が入ること
ちなみに、アフィリエイトの場合、広告主と広告掲載者(アフィリエイター)との間にアフィリエイトサービスプロバイダー(以下「仲介業者」という)という業者が介在するのが通常です。
従って、この問題を論じるに際し、①広告主からの観点、②広告掲載者(アフィリエイター)からの観点、③仲介業者からの観点に分けて検討したいと思います。
2.アフィリエイト広告を利用するそれぞれの立場からの注意点
① 広告主が留意すべき法律問題
広告主は、多数の広告媒体を比較的手軽に得られること、しかも成功報酬型であるため安価に利用できるというメリットがあるとされています。
しかし、一般的には広告主は広告掲載者(アフィリエイター)の詳細な情報が分からず、しかも仲介業者が介在することから直接的な統制を取ることが難しいこと、そして、広告掲載者(アフィリエイター)は成果報酬型であるが故に、報酬欲しさに過大な広告を行ってしまう可能性があるという問題点があります。この問題点が広告主にとって思わぬリスクを招くこととなります。
すなわち、法律的には、広告掲載者(アフィリエイター)は商品販売という事業を行っているわけではない以上、特定商取引法・景品表示法等の(一般的な)広告規制や薬事法・健康増進法等の商品の特性に応じて適用させる法規制は全て広告主に適用されることになります。
そして前述の通り、広告主は広告掲載者(アフィリエイター)を直接統制することが難しい現状があることから、広告主の知らないところで、訴求効果だけを狙った過剰・過大・誇大な広告や明らかな法律違反の広告が往々にして行われたりします。その結果、当該広告に対する法律上の責任を負うのは広告主となります。
また、広告掲載者(アフィリエイター)の広告掲載に際して、著作権法や商標法違反の問題が生じた場合、広告主に対する責任追及がなされる可能性も否定できません。従って、広告主としては、これらのリスクを念頭に置きながら、アフィリエイト広告を利用する必要があります。
② 広告掲載者(アフィリエイター)が留意すべき法律問題
前述の通り、広告規制が直接適用される訳ではありません(但し、薬事法や健康増進法については直接適用の余地があります)。が、今後の法改正や法解釈の変更はあり得るところであり、「違法性の有無を問わず、とにかく売れればいい」という態度で臨むことは現に慎むべきです。
また、広告掲載者(アフィリエイター)の広告により、広告主が損害を被った場合、後々、広告主より損害賠償請求等の法的請求がなされる可能性は否定できませんので、やはり自らも法規制に違反しない態様での広告掲載を行う必要があります。
ところで、広告掲載者(アフィリエイター)特有の問題としては、報酬の支払い方法に関するトラブルがあげられます。
すなわち、比較的多くの仲介業者との約款では、報酬(広告手数料)が一定額を超えない限り支払を受けられないとする条項が設けられています。このため、広告を掲載しても報酬を得られるまで、相当なタイムラグがあることに十分留意すべきです。従って、ありふれたコメントにはなってしまいますが、約款は良く読んでからアフィリエイト広告を始めることが肝要です。
なお、約款上、広告掲載者(アフィリエイター)に一方的に不利な条項が規定されている場合、果たして消費者契約法で救済されるのかは解釈が分かれるところだと思います(広告掲載者(アフィリエイター)は報酬を得る目的で広告掲載を行っているという点では事業者ですが、現在の広告掲載者(アフィリエイター)の対象者を見ると、果たして全てを事業者と言い切ってしまっていいのか?という議論もあり得ると思います)。
③ 仲介業者が留意すべき法律問題
現状の法解釈では、仲介業者が上記で述べた広告に対する法規制の適用対象になる可能性は低いと思われますが、今後の解釈動向や仲介業者と広告主との関係(特定の広告主のみ扱う仲介業者である場合など)によっては、全くリスクが無いとは言い切れないと考えられます。
また、これも議論があるともいますが、仮に広告主と仲介業者との契約関係が広告委託契約と判断される場合、仲介業者から広告掲載者(アフィリエイター)への契約関係は再委託と解釈される可能性も否定できません。こうなった場合、独占禁止法の特別法である下請法の適用の有無についても検討する必要が生じるかもしれません。
さらに、②でも述べたとおり、消費者契約法の適用も否定できません。
いずれにせよ、仲介業者に対する現行法上の規制は曖昧な状態であることから、いつ何時にリスクが生じるか分からないというのが実情だと思います。
3.ドロップシッピングとの相違
ドロップシッピングについても法律上の定義があるわけではありませんが、一般的には「無在庫販売」などと呼ばれており、要は、ネットショップの運営者(ドロップシッパー)は在庫を抱えることなく、購入者がネットショップで注文を行った時点でメーカー・卸売業者(ベンダー)に連絡し、直接、メーカー・卸売業者(ベンダー)が購入者に商品等を発送するという取引形態をいいます。
そして、ドロップシッピングの最大の特徴は、ドロップシッパー(ネットショップの運営者)が、商品等の値段設定ができるという点になるといわれています(販売価格とベンダーの設定価格との差額がドロップシッパーの報酬となります)
ところで、ドロップシッピングにも色々な種類があるため、一概には言えませんが、アフィリエイトとの大まかな違いは、
・ドロップシッピング=商品等の販売者に該当する可能性が高いことから、特定商取引法・景品表示法の広告規制や薬事法等の直接的な規制対象となる
・アフィリエイト=あくまでも商品販売のウェブサイトへの誘導を行っているに過ぎない以上、直接的な販売者に該当しない
という点にあると考えられます。
ちなみに、平成18年頃に経済産業省はドロップシッピングを行う業者に対して、特定商取引法が守られていないとして調査を行った旨報道されています。ドロップシッピングについての法解釈は固まっていないのが現状ですが、ドロップシッパー(ネットショップの運営者)は、特定商取引法等の適用を受けると考えて対処した方が無難と思われます。
※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。