旅行業と広告表示(旅行業者と提携したい方々が知っておきたい旅行業特有の広告規制)
旅行業と広告表示(旅行業者と提携したい方々が知っておきたい旅行業特有の広告規制)
1.はじめに
ところで、旅行業(=報酬を得て、運送機関や宿泊機関などと旅行者との間に入り、代理、媒介、取次ぎを行う事業のこと。旅行業法2条を参照)を行うには旅行業登録が必要となりますが、この点は別に譲ります。
本稿では、例えば、医療機関が医療ツーリズムを実施するに際し、旅行プランを考案し、当該旅行プランを旅行業者に実施してもらうに際して、医療機関側(考案側)が予め留意しておいた方が良い表示に関する法規制を記述します。
なお、旅行契約形態として、旅行業法には「手配旅行」と「企画旅行」とが定められていますが、本稿では「企画旅行」を前提とします。
(※注)
「手配旅行」については、旅行者からの依頼に基づき、乗車券や航空券、宿泊施設の手配等を行うことをイメージすればよいかと思います。
一方、「企画旅行」については、旅行業者が旅行日程やコース、訪問場所や宿泊施設などを計画し、パッケージ化したものをイメージすれば良いかと思います。
2.旅行業法上の表示規制
まず、旅行業者が旅行者向けに募集広告を行うに際しては、旅行業法12条の7及び旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則13条に規定された表示を行う必要があります。具体的には次の通りです。
また、景品表示法の特別規定に位置付けられますが、旅行業法12条の8及び旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則14条により誇大広告が禁止されます。具体的な内容は次の通りです。
なお、旅行業法に規定はありませんが、景品表示法に基づき、旅行業公正取引協議会が公正競争規約として「募集型企画旅行の表示に関する公正競争規約」を公表し届け出ていますので、こちらも留意する必要があります。
3.国際観光ホテル整備法上の表示規制
外国人客を日本国に招致するに際して問題となってくるのが宿泊施設の問題です。
ところで、宿泊施設の中でも、外国人客の宿泊に適すると観光庁長官がお墨付きを付与した場合(法律上は登録を認めるという形式になっています)、「登録ホテル」という名称を用いることができるようになります。
逆に裏を返せば、観光庁長官による登録が無い場合、「登録ホテルまたはこれに類似する名称を用いてはならない」とされています(国際観光ホテル整備法8条)。
4.温泉法上の表示規制
外国人客に限らず、日本国内で根強い人気を誇るのが温泉旅行ですが、この温泉についても表示について規制があります。
まず、そもそも論として、「温泉」と呼んでよいのは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、摂氏25度以上の温度又は法律が定めた物質を有するものとされています。
従って、例えば、単に水を温めただけでは温泉と言えないのはもちろん、法律が定めた物質が含めれておらずかつ地中からのゆう出時に25度未満であれば温泉とは言えなくなります。
(※下線部分について2020年7月19日追記)
次に、温泉法上、表示しなければいけない具体的な内容は次の通りとなります(温泉法18条及び温泉法施行規則10条)。
なお、数年前に温泉の偽装表示が問題になったことを受けて、公正取引委員会が「温泉表示に関する実態調査について」というレポートを公表し、この中で景品表示法との関係も明らかにしています。おそらくは消費者庁もこの考え方を引き継いでいると思われますので、あわせて参考にしたい資料です。
※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。