<会社への予防注射 Vol.9> 知的財産権に関する見直し②

<会社への予防注射 Vol.9> 知的財産権に関する見直し②


 


(前回の続き)


 中小企業にとって、知的財産権とはどの様にかかわっていけばよいのでしょうか?


 

 
 

ポイント

 前回は特許権と不正競争防止法に関する事項を解説しました。
 今回は、商標権は一度登録したら終わりではありません。10年後に更新しないことには登録が取り消されてしまいます。
 また、著作権については、「著作物の該当性」と「著作権の帰属先」を事前検討しておく必要があります。意外とこの点は落とし穴になっていますので注意が必要です。
 
 

解説

社長(以下「社」) :我が社の「売れ筋商品」に、最近パクリ商品が出てきたんだけど、どうにかならんものかね。
 
弁護士(以下「弁」) :具体的にはどういった点で「パクリ」だと思われるのですか?
 
社 :商品名を一文字変え、ロゴとかパッケージはほとんど同じなんだよ。
 
弁 :近年にまれに見る分かりやすいパクリですね(苦笑)。
ちなみに、商標登録とか何か権利化は行っていますか。
 
社 :あ!そういえば昔に試行錯誤で自分で商標出願していたわ。
こんな場合、商標権侵害で訴えることができるよね!?
 
弁 :おそらくは…、ただ、商標登録したのはいつの話ですか?
 
社 :えっと…、10年くらい前かなぁ…。
 
弁 :うーん、ちょっと雲行きが怪しくなってきましたねぇ。
 
社 :え、なんで!?
 
弁 :実は、商標登録は更新制度になっていて、登録後10年経過時点で更新料を支払わないことには、商標登録が抹消されてしまうんです。
 
社 :そうなの!?
 
弁 :ちょっと待ってくださいね。特許庁のWEBから探索しますね。
えっと…、今月末で期間満了のようなので、まだ間に合いますね。
明日にでも更新手続きと更新料の支払いをお願いできますか。
 
社 :わかった。手続き進めるよ。
ところで、商標権侵害の問題もあるけど、パッケージデザインを真似している場合って、著作権侵害で闘うことはできないの?
 
弁 :理論上はあり得る話ですね。
ただ、そもそも論として、今回のパッケージデザインが「著作物」に該当するかの事前検討が必要です。
 
社 :ふーん。。。要は、法的に保護するに値するだけの創作物といえるのかということだな。
 
弁 :おっしゃる通りです。
ところで、著作物の点よりも、そもそもこのパッケージデザインって貴社に著作権が帰属すると考えてよいのでしょうか?
 
社 :どういうこと?
 
弁 :いや、この様なデザインって、外部業者に依頼して作成してもらうことが多いんじゃないのかなという気がしたもので。
 
社 :そうだよ。外部に委託したよ。
 
弁 :やっぱり…。そうなると当該デザインの著作権が貴社に帰属していると言えるのかは非常に微妙な問題になってしまいますね。
 
社 :なんで!?
 
弁 :著作権帰属の大原則は創作者なんです。
したがって、本件の場合、委託した外部業者に帰属することになるんです。
このため、著作権を貴社に帰属させるためには、別途著作権の譲渡に関する契約を結ぶ必要があるんです。
 
社 :そうなのか。待てよ、当時の契約書があるはずだから、その点何か取り決めがないか確認してよ。
 
弁 :了解しました。そうしましたら、契約書を見つけ次第、ご送付いただけますでしょうか。
 
社 :分かった。
 
弁 :これに関連してですが、貴社のホームページも外部業者に委託して作ってもらったものですよね?
 
社 :そうだよ。
 
弁 :そうであれば、WEBの画面構成や表示、場合によってはプログラムそれ自体についても著作物を観念することができますので、この点でも要注意ですね。
 
社 :どういったことが問題となるの?
 
弁 :典型的には、ホームページを構成する様々なものについて著作権が外部業者に帰属しているとなると、簡単に他の業者に乗り換えることができませんよね。
 
社 :なるほど、勝手に謄写で使うことができない状況になっているわけか。
 
弁 :そういうことです。
 
社 :この点についてもチェックしてよ。
 
弁 :了解しました。


 

 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。

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