<会社取引と金融①>社長の退任と連帯保証契約の関係は?
【ご相談事項】
私はA社の代表取締役であり、A社の連帯保証人になっています。後継者の育成も完了したことから一線より退こうと思っているのですが、次の場合、銀行借入に関する連帯保証契約はどうなるのでしょうか?
①代表取締役(社長)から、代表権のない取締役に変更となった場合
②取締役(役員)を退任した場合
③A社の全株式を後継者に譲渡した場合
【結論】
①から③いずれの場合であっても、当然に連帯保証契約が終了するわけではありません。
銀行と相談しない限り、引き続き連帯保証契約は継続したままとなります。
【ポイント】
1.原則的な考え方
社長(代表取締役)だから連帯保証人になっている、あるいは経営者(株式保有者)だから連帯保証人になっていると考えている方は多いかと思います。たしかに、銀行・金融機関に借入を要請する際、この考え方が前面に出てきますので、間違いではありません。
しかし、連帯保証契約は「契約」である以上、一方の都合で当然に終了するものではないというのが法的解釈です。すなわち、たとえ役員を退こうが、全株式を手放そうが、銀行・金融機関が連帯保証契約の終了に「同意」しないことには、連帯保証人から外れることは不可能です。
なお、理論的にも、役員の退任はA社との委任契約に関する問題、株式の譲渡は買主との売買契約の問題であり、銀行・金融機関が契約当事者となるわけではありません。このため、銀行・金融機関との連帯保証契約に何ら影響を及ぼさないということになります。
2.経営者保証に関するガイドラインの活用
上記1.の解説の通り、社長・役員を退任することや株式を手放すことと連帯保証契約の解消は当然にリンクしません。
しかし、中小企業における連帯保証は、従前より問題視されているところであり、近時は
・経営者保証に関するガイドライン
・事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則
を用いて、銀行・金融機関と協議し、連帯保証契約の解消を目指すということが行われています。
例えば、
①会社の経営状態が良好であることを前提にした連帯保証契約の解消であれば、「経営者保証に関するガイドライン」6(1)を参照する
②事業承継を行うことを前提にした連帯保証契約の解消であれば、「経営者保証に関するガイドライン」6(2)及び「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」を参照する
③債務整理を前提にした連帯保証契約の解消であれば、「経営者保証に関するガイドライン」7を参照する
といった例が挙げられます。
(参考)
3.当事務所の提供サービス
上記2.で記載したガイドラインは、付属するQA集などをよく読み込む必要があり、正直なところ経営者だけで対応することは不可能と言わざるを得ません。
当事務所では、ご相談者様がガイドラインの適用対象となるのか診断を行ったり、必要な準備の支援を行ったり、銀行・金融機関との交渉を代理する等のサービスを提供しています。
連帯保証契約の解消に関するご相談があれば、当事務所にお声掛けください。