ドロップシッピングと広告法(景品表示法など)
ドロップシッピングと広告法(景品表示法など)
第1 ドロップシッピングとは
ネットショップのオーナーは商品の在庫を持たず、ネットショップで注文が入った時点で、メーカーや卸売り業者から商品を直送させるネットショップの運営方法の一形態のことを言います。
ところで、平成23年10月28日(平成24年5月9日改訂あり)に消費者庁より公表された「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(以下「ガイドライン」といいます)を参照すると、次のような解説が行われています。
・ドロップシッピングショップに消費者からの注文があった場合、注文情報がドロップシッピングショップから注文された商品の製造元・卸元に送信され、注文情報を受けた製造元・卸元は、注文を行った消費者にドロップシッピングサイト名義で商品を発送する(ドロップシッピングサービスプロバイダーの名義で発送される場合などもある。)。
・また、ドロップシッパーと商品の製造元・卸元との間を仲介してドロップシッピングを実現する各種サービス(ドロップシッピングショップの開設に必要なショッピングカート機能、決済機能、口コミ機能や商品データベース等)を提供する事業者(ドロップシッピングサービスプロバイダー。以下「DSP」という。)が存在する。それらDSPが提供するサービスにより、ドロップシッピングショップを構築する技術力や商品の仕入ルートを持たない個人等も容易にドロップシッピングショップを開設することが可能となっている。
・DSPが仲介する場合の物流、商流を例示すると、
① ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで販売する商品を自ら選択し、当該商品の価格を自ら決定した上で、消費者からの注文を受ける。
② 消費者がドロップシッピングショップで商品を購入した際の注文情報はDSPを通じて商品の製造元・卸元に伝送される。
③ 注文情報を受けた商品の製造元・卸元は、ドロップシッピングショップの名義で商品を消費者に発送する。
④ DSPは、自らが提供する決裁システムを通じて消費者から商品の代金を受け取り、当該代金とDSPがドロップシッピングサイトに商品を提供する価格(ドロップシッピングサイトにとっての仕入れ値に相当)との差額を報酬としてドロップシッパーに支払う。
⑤ DSPは商品の製造元・卸元に商品の代金を支払う。
① ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで販売する商品を自ら選択し、当該商品の価格を自ら決定した上で、消費者からの注文を受ける。
② 消費者がドロップシッピングショップで商品を購入した際の注文情報はDSPを通じて商品の製造元・卸元に伝送される。
③ 注文情報を受けた商品の製造元・卸元は、ドロップシッピングショップの名義で商品を消費者に発送する。
④ DSPは、自らが提供する決裁システムを通じて消費者から商品の代金を受け取り、当該代金とDSPがドロップシッピングサイトに商品を提供する価格(ドロップシッピングサイトにとっての仕入れ値に相当)との差額を報酬としてドロップシッパーに支払う。
⑤ DSPは商品の製造元・卸元に商品の代金を支払う。
第2 ドロップシッピングが景品表示法上問題となる場面
1. ドロップシッピングは平成20年に東京都が特定商取引法に基づく行政処分を行ったことで、一種の消費者被害のようなイメージがつきまとっています。
このためか、最近ではドロップシッピングの話が余り出てこなくなってきました。
2. 上記の通り、ドロップシッピングに対し、消費者保護のための法律である特定商取引法が適用されたことで、ネットショップのオーナー=ドロップシッパーは事業者としての意識が薄いかもしれません。
しかしながら、ネットショップの運営者、すなわち商品・役務の販売者には変わりありませんので、当該ネットショップを利用する者から見れば「事業者」となります。
従って、景品表示法上の適用があることになります。
上記ガイドラインによれば、次のような留意事項が記載されています。
・ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで商品を供給するに際しては、当該商品の内容について、客観的事実に基づき正確かつ明瞭に表示する必要がある。
・ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで商品の効能・効果を標ぼうする場合には、十分な根拠なく効能・効果があるかのように一般消費者に誤認される表示を行ってはならない。
・ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで二重価格表示を行う場合には、最近相当期間に販売された実績のある同一商品・サービスの価格を比較対照価格に用いるか、比較対照価格がどのような価格であるかを具体的に表示する必要がある。
・製造元・卸元、又はDSPのうち製造元・卸元の機能を兼ねる者は、ドロップシッパーに対して商品を供給する場合であって、販売促進のためのノウハウ等の情報を提供すること等により、ドロップシッパーが一般消費者に示す表示内容の決定に関与するときには、十分な根拠無く効能・効果があるかのように一般消費者に誤認される表示など、景品表示法に違反する表示が行われないようにしなければならない。
第3 問題となる具体的事例
上記ガイドラインによれば、次のような事例が掲載されています。
・ドロップシッピングショップにおいて、十分な根拠がないにもかかわらず、「血液サラサラ」、「記憶力アップ」、「免疫力アップ」、「老化を防止する」と効能・効果を強調して表示すること。
・ドロップシッピングサイトにおいて、最近相当期間に販売された実績のある価格ではないにもかかわらず、「通常価格」と称する比較対照価格を用いて、「通常7,140円→特別価格3,129円」と表示すること。
第4 その他
1. 上記第2での述べた通り、ドロップシッピングについては、特定商取引法上の業務提供誘引販売取引に該当するとして、東京都がDSPに対し行政処分を行いました。また、平成23年3月23日の大阪地方裁判所は、ドロップシッパーの業務内容からすれば、実質的なネットショップの運営者はDSP側にあるとして、特定商取引法上に基づくクーリングオフを認める判決を言い渡しました。
以上のことから、ドロップシッピングについては、消費者被害としての位置付けが強くなってきています。
ただ、気を付けなければならないのは、ドロップシッピングと一言でいっても、様々な取引形態があると考えられますので、全てが特定商取引法上の業務提供誘引販売取引に該当する訳ではありません(上記大阪地裁の裁判例でも触れられているところです)。
したがって、安易にドロップシッピングを始めようとは思わない方が無難です。
2. ネットショップ利用者からすれば、ドロップシッピングか否かは分からないのが実情です。
したがって、対利用者との関係では、ドロップシッパーはどこまで行っても売主(販売業者)となりますので、
① 特定商取引法上の「通信販売」の規制が適用されること(特商法上の表記や誇大広告の禁止、迷惑メール規制など)
② 商品・サービスに不具合があった場合のクレーム処理対応はドロップシッパーが行う義務があること
③ 返品対応についてもドロップシッパーが負担すること
④ 何らかの事情で販売取引が取消・無効となった場合のリスク(代金返還や商品取り戻しなど)はドロップシッパーが負担すること
等の法的責任を負うことになります。
一時期、「在庫を持たずに商売を始めることが可能!」というフレーズに躍らされて、ドロップシッピングに挑戦する人が続出したのですが、売主(販売業者)意識を持たないまま、顧客との間でトラブルになった人もいるようです。
3. ドロップシッパーは販売業者であり広告主でもある以上、取扱商品に関する各種の業法が適用されることとなります。例えば、いわゆる健康食品に関係する薬事法や健康増進法、中古品に関係する古物営業法などの適用があり得ますので、この点についても留意する必要があります。
※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。