【事例11 WEB制作の途中終了と報酬請求(ベンダー側)】
相談企業の業種・規模
■業種:IT(WEB制作)
■規模:10名以下
相談経緯・依頼前の状況
WEB制作に関する契約を締結し、コンテンツ等の制作作業を順次進めていたところ、ユーザよりページ追加や機能変更などの多くの要望が出てきたため、契約書で定めた金額では要望を満たすことができない旨の説明を行った。
そうしたところ、ユーザは一方的にWEB制作に関する契約を解約すると主張し、以後一切の交渉に応じなくなった。
当社としては、契約を終了させること自体はやむを得ないと考えているものの、作業内容に応じた清算を行って欲しいと考えている。法的に認められるものなのか教えてほしい。
解決までの流れ
ユーザの要望事項が、WEB制作に関する契約に定める受託業務内容に含まれている場合、ベンダが業務の遂行を拒絶したことになりかねないことから、まずは契約締結時点での業務内容を確定するべく、契約書以外にも仕様書や提案書などの関係書類をご準備いただくようお願いした上で、第1回目の法律相談に臨みました。
この点、ユーザの要望事項は、契約締結時点での業務内容に含まれていないことが確認できました。そこで、ご相談者様の責任のない事情により解約となっている以上、損害賠償を請求できる可能性が高いこと、もっとも法律上の損害を算定する上で、作業分に相当する額をどのように算定するのかやや厄介な問題があること、損害の算定に当たっては別の考え方もあること等をご説明し、一度持ち帰って検討していただくことになりました。
数日後、ご相談者様より、弁護士名義で損害賠償の支払いを求める内容証明郵便を出してほしいとのご要望を受け、今後の方針等を確認するべく、第2回目の法律相談に臨みました。
第2回目の法律相談の際、損害算定に関係する資料を検証すると共に、ユーザが万一支払ってこない場合の対処法につき協議を行ったところ、訴訟やむなしという結論に至りました。
この方針を踏まえ、弁護士名義の通知書をユーザに送付しましたが、支払いもなく無反応であったことから、即時に訴訟を提起しました。
ユーザは様々な主張を展開してきましたが、あまり裁判官には響かなかったようで、裁判官は一定額の支払いはやむを得ないという心証を開示しました。これを踏まえ、和解手続きに入り、最終的には一定額の支払いを受けることで和解解決を図ることになりました。そして、和解金の支払いが行われたことを確認し、弁護士による作業は完了となりました。
解決のポイント
弁護士に委託し裁判まで行うとなると、どうしても費用対効果の問題を考えざるを得なくなります。
本件では、その点を考慮しつつも、泣き寝入りは避けたいというご相談者様の強い意向があったことから、訴訟提起という手段を用いることで、逃げ切ろうとする相手方を表舞台に引っ張り出すことができたことが解決のポイントとなりました。
解決までに要した時間
約1年(第1回目の法律相談から、和解金の支払い完了まで)
当事務所ならではのサービス
法律論としては、損害賠償請求権が成立するのかという責任論と、法律上の損害及び損害額を立証できるのかという損害論の両方を検証する必要があります。
また、本件のようなWEB制作、あるいはシステム開発といったIT業界は、独特の取引実情とこれに応じた裁判理論が形成されており、専門性の強い領域となります。
当事務所は、複数のベンダの顧問弁護士として活動しており、裁判はもちろん交渉案件等を通じて獲得した知見とノウハウを多数保有しています。そして、ご相談者様にこれらの知見とノウハウを積極的に活用することで、実践的なアドバイスとご提案を行うよう努めてまいります。
中途解約による報酬清算問題にお悩みであれば、是非当事務所にお声掛けください。