事例10 システム開発に対する追加報酬の支払い拒絶(ユーザー側)
相談企業の業種・規模
■業種:物流
■規模:100名以下
相談経緯・依頼前の状況
勤怠管理システムの制作を依頼したところ、無事完成し引渡しが完了した。その後、システム開発会社より請求書が届いたが、当初の見積り金額より高いものとなっていたため問い合わせたところ、追加業務分を上乗せしているとの説明を受けた。
当社は追加業務を要請した認識はなく、別途費用が発生するといった話は一切聞いていない。
支払いを拒絶したいが、問題ない対応と言えるのか相談に乗ってほしい。
解決までの流れ
追加発注か否かを判断するためには、契約締結当初に定めていた開発対象及び業務内容が重要となるため、契約書はもちろんのこと、仕様書、提案書、議事録、契約締結に至るまでのメールでのやり取り等の資料一式をご準備いただくよう予めお願いした上で、第1回目の法律相談に臨みました。
ご準備いただいた資料から読み取れる契約締結当時の業務内容を整理し、ご相談者様の認識として、契約締結後において当初の業務内容と変更になった点はどこなのかご説明していただきました。そうしたところ、仕様書等で概括的に定めていた業務内容につき、契約締結後に詳細を定めていったに過ぎず、追加発注とは言い難いのではないかという一応の結論が出ました。
とはいえ、断定することもできないことから、ご相談者様の認識をシステム開発会社に書面にて説明し、それに対してシステム開発会社がどのような反論を行ってくるのかを踏まえ、方針を見定めていくことを確認し、第1回目の法律相談を終えました。
システム開発会社から返答があり、再度相談したいとの連絡を受け、第2回目の法律相談に臨みました。
システム開発会社の返答内容を検証したところ、説得力のあるものとは言い難く、仮に裁判になったとしても追加支払い義務が生じる可能性は低いように思われました。もっとも、ご相談者様としては、保守運用を任せていることもあり、あまり対立状態を長期化させることは得策ではないという判断をお持ちのようでした。
そこで、追加請求のうち一部を支払うことをもって解決を図ることをご提案し、第2回目の法律相談を終了させました。
その後、ご相談者様より無事決着がついたことの連絡と、合意書案の作成依頼があったことから、作成した合意書案のデータを納品後、作業完了となりました。
解決のポイント
追加請求が認められる裁判例などを踏まえると、ご相談の事例の場合、認められる可能性は低いと判断できるものでした(システム開発会社のプロジェクトマネジメントが不十分であったことに起因する作業量の増加)。しかし、ご相談者様においてもタイトなスケジュールとなったことへ負い目があったこと、保守運用作業への悪影響を避けたいこと等の事情がありました。
そこで、一定額の支払いをもって解決を図ることの有用性をご相談者様に説明し、ご理解いただけたことが、早期解決のポイントとなりました。
解決までに要した時間
約3ヶ月(第1回目の法律相談から、合意書締結まで)
当事務所ならではのサービス
上記事例では、関係者が集まって打ち合わせを行う法律相談は2回しか行っていませんが、実際には法律相談以外の場で頻繁にご相談者様の担当者と弁護士との間でメール等でのやり取りを行っています。
当事務所では、顧問弁護士に準じた柔軟なやり取りをご希望される事業者様に対し、プロジェクト型顧問弁護士サービスをご提案しています(プロジェクト=案件に対応する期間中のみ顧問契約を締結するというイメージです)。
弁護士に交渉を任せることが憚られるが、バックヤードでの継続的なサポートを求められる場合であっても、当事務所はご相談者様のご支援をすることが可能です。