【事例5】企業取引にまつわる法律問題(企業法務)に関する解決事例・実績
相談企業の業種・規模
業種:製造業
規模:10名以下
相談経緯・依頼前の状況
当社は、委託元である大手企業が保有する工場内の一部を借り受け、加工作業を受注している。当社の取引先は当該大手企業のみであり、他の取引先はない。
今般、当該大手企業より、競業他社との価格競争についていけないため、事業そのものを取り止める方針となったこと、工場を閉鎖する予定であること、したがって、機械設備等を撤去した上で退去してほしい旨の要請を受けた。
当社の存亡にかかわる重要な問題であるため、相談に乗ってほしい。
解決までの流れ
第1回目の法律相談
①大手企業に対してどの様な対応を行うのか
②今後の会社運営をどうするのか
③従業員の処遇をどうするのか、
を意識的に分けて検討する必要があるのではとアドバイスしました。
ただ、一方で、現状を考えると、現在の技術力等を活かせる新規取引先が発掘できるのであればともかく困難が予想されること、最悪の事態として、会社は廃業するほかない、従業員も解雇せざるを得ないというのであれば、大手企業に対してどこまで金銭要求し、どれだけの金銭を支払ってもらうのかが唯一の対応方針とならざるを得ないこともアドバイスしました。その上で、新規取引先の発掘が容易なのかを探るべく、知人の中小企業診断士を紹介し、第1回目の法律相談を終了させました。
第2回目の法律相談
1ヶ月くらい経過後、再度ご相談者様より連絡があり、第2回目の法律相談を実施することになりました。
ご相談者様より、新規取引先を発見することは容易ではないこと、残念だが廃業せざるを得ないこと、したがって、できる限り大手企業より損失補償等を得るという方針で進めていきたいが、自分では交渉することが難しいので、弁護士に交渉を任せたいというお話がありました。これを踏まえ、大手企業に金銭請求するにしても、一定の合理的根拠が必要となることから、3期分の決算書、1年程度の賃金台帳、社長個人の家計収支などの資料を準備するようお願いし、第2回目の法律相談を終了させました。なお、代理人弁護士として活動する場合のお見積書を後でメール送信しておきました。
第3回目の法律相談
ご相談者様より資料が準備できた旨の連絡があったことから、第3回目の法律相談を実施しました。
事前に提示したお見積書につきご了承後、資料の精査と資料から読み取れる要求額をご説明の上、実際の交渉方針につき検討を行いました。その結果、継続的契約の一方的な解消は法的に許されないことを前面に押し出しつつ、これまでの取引経過や契約解消までの経緯からして、独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する可能性があること、場合によっては公正取引委員会への違反申告も辞さないといった強めの態度に出て、一定の金銭の支払いはやむを得ないと大手企業に動機づける戦略をとることが決まりました。
上記戦略に従い、弁護士が大手企業との交渉を開始したところ、大手企業も弁護士を選任し、弁護士同士での交渉となりました。その結果、半年間は今まで通り発注を行うこと、発注終了後1ヶ月以内に退去するが、工場内の機械類等の撤去は不要であること、及び大手企業はご相談者様に対して一定額の支払い(合意退職に要する解決金、1年程度の社長の生活費など)を行うことで合意に至りました。合意書を締結し、金銭支払いが確認できたことで、弁護士による作業は完了となりました。
解決のポイント
金銭解決が現実的であることを初期段階で決めることができたこと、単純に金銭要求をするのではなく法的根拠を示すことで、相手方が拒絶しづらい環境を構築できたことが、本件事例では解決のポイントとなりました。
解決までに要した時間
約10ヶ月(第1回目の法律相談から、金銭支払い確認まで)
当事務所ならではのサービス
本件事例では、結果的に廃業支援という形で整理を進めましたが、事例によっては取引中止の通告を撤回させるという対応をとる場合もあります。
特定の取引先に依存している中小企業は多いと思いますが、その取引先より無理難題を言われて困っているご相談者様がいましたら、是非当事務所までお声掛けください。
※上記はあくまでも一例です。案件ごとにより手順や結果が変わることもありますので、この点はご容赦願います。